OADG キーボード・カスタマイズ実例：
NICOLA 109-T* 型

First Written on 09 June, 1999
Revised on September 09, 1999

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はじめに

今このページを読んでいる読者なら、おそらくご存じの通り、現在ウィンドウズ・パソコンでは、「親指ひゅんＱ」や「Q's Nicolatter」といった「親指化ソフト」(NICOLAエミュレーター)を活用することによって、日本語106/109「JIS」キーボードを「親指シフト化」させて使うことができる。

「親指シフトによる日本語入力を行う」という目的は、それだけでも十分に達成できると言える。しかし、もしあなたがさらに進んで、

「日本語IME on/off 両モードで";"右隣バックスペース・キーを使いたい」
とか、あるいは、
「バックスペースや"[", "]"キーは、通常のJISキーボードと同じ配置で使いたい」

といった要望を持っているとしたら、その実現のためには、「日本語IME off 状態でのキー配列(キーマップ)変更」を行う必要がある。そして、そのためには、

「キー配列変更ソフトウェア」を、「親指ひゅんＱ」もしくは「Q's Nicolatter」と組み合わせて使わなくてはならない。

ところが、この「組み合わせの設定方法」がパソコン初心者にはちょっと分かりづらいのだ。そこでこのページでは、フリーソフトウェアのVxDキー配列変更ツールを活用して、OADG 日本語キーボードをNICOLA向けにカスタマイズする方法を、実例にもとづきながら詳しく紹介することにした。

以下のソフトウェアによるキー配列変更セッティング時の注意事項

注意点その１

以下で紹介するキーボードカスタマイズ例の「一応の動作確認」は、このページの筆者が自分のマシン(*注、下記参照)を用いて行っている。しかし、以下のカスタマイズ例があなたのマシン環境でも正常に動作することを、筆者は保証できない。以下を試行してみる際は、試行者自身が責任とリスクを負うことになる。もしあなたのマシンでトラブルが発生しても、筆者自身はいかなる保証もできない。この点を納得できた人のみが、以下の方法を試してみることが出来る。なお、このページで提供している方法は、IBM PC/AT互換機でのみ試してみることが出来る。
(*筆者のマシン環境： [Hardware] ThinkPad 560X; [Keyboard Driver] 「106日本語(A01)キーボード(Ctrl+英数)」; [OS] Windows 98 SP1)

注意点その２

以下を試行してみる前、すでに何らかのキー配列変更ツールを使用している場合には、必ずそれ(ら)の使用を中止（＝アンインストール）して、キー配列がオリジナルに戻った状態でマシンを再起動させた「後」に、以下の設定を行うこと。さもないと、配列変更が正常に行われなくなる可能性がきわめて高い。この意味が分からない人は、下記の手法を試してはならない。

注意点その３

以下で紹介するキー配列変更ツール、すなわち、SwapScan.386 及び keymap.vxd はいずれもフリーソフトウェアである。しかし、フリーソフトウェアであるからといって、「ちょっと試してみるか」と安易な気持ちで実行に移すのは禁物である。これらはいずれも、system.ini に独自のエントリー(ないしはセクションとエントリー)を付加してカスタマイズを行う仕組みになっている。そのため、ini ファイル編集に自信のない人は手を出さないこと。ini ファイル編集時に下手なミスを犯すと、最悪の場合、マシンが正常に使えなくなる恐れがあるからである。

注意点その４ (初心者へのアドバイス)

ini ファイル編集に自信のない人は、シェアウェアの keylay (Windows 98 用は keylay 98) を使うとよいだろう。keylay を使うと、キーボード図のグラフィック画面を見ながら、マウスクリックだけで簡単にキー配列変更を行うことが出来る。パソコン初心者でも、keylay なら十分使いこなせるものと信じる。筆者もすでに10ヶ月ほどKeylay95/98 をQ's NicolatterやOAK V6添付親指ドライバーと組み合わせて使っているが、ほとんどトラブルもなく、快適に「親指生活」を送ることが出来ている。「日本語IME on/off 両モードでできるだけ同じキー配列を使いたい」という希望を持っている初心者は、ぜひ Keylay98 を試してみてほしい。

keylay の入手先：作者のウェブサイト http://www.jomon.or.jp/~yukihiro
keylay を使った場合の細かい使いこなしについては、別文書を参照のこと。

注意点その５ (それでも以下の方法にチャレンジしてみたい初心者へ)

「私はウィンドウズ・パソコン初心者で、『.ini ファイル編集』なんて初耳だ。しかし、リスクは自分で負うから是非ともチャレンジしてみたい」------という方のために、別文書で system.ini の編集方法を紹介した。その文書を本文書とともに熟読すれば、初心者でも独力でキーカスタマイズができる。Try it at your own risk!

NICOLA 109-T* 型 (OADGキーボードを流用するタイプ)

※出典： nifty:FKBOARD/MES/16/102
名称の"T"は「移行措置である／一時的のものである」という意味を表す transient から採ったものか? もっとも、このNICOLA109-T* 型が「NICOLA規格原案」に最終的に採り入れられたかどうかは不明なのである。ひょっとすると、NICOLA109-T* 型は、規格案には採用されていない可能性もある。そこで、本文書では、「NICOLA 109-T* 型」という具合に名称末尾にアスタリスク(*)をつけて表記することにした。

キー配列図

「NICOLA規格原案」の「NICOLA109-C型」配列と比べてみてください。
テキストファイルによる「入力文字一覧」を別文書で用意しました。そちらの方が分かりやすいかもしれません。必要に応じて参照して下さい。

   +----+
   |Esc | ※キー位置の表現法： A＝C01 (C段の01)
   |    |
   +----+
     00   01   02   03   04   05   06   07   08   09   10   11   12   13   14
   +--------------------------------------------------------------------------+
E段|漢字|! ! |" " |# # |$ $ |% % |& & |' ' |( ( |) ) |    |= = |~ ~ || | | Bs |
   |    |1 1 |2 2 |3 3 |4 4 |5 5 |6 6 |7 7 |8 8 |9 9 |0 0 |- - |^ ^ |\ \ |    |
   +----+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+----+
D段|  Tab  |Q ぁ|W え|E り|R ゃ|T れ|Y よ|U に|I る|O ま|P ぇ|`   |{ 「|      |
   |       |q 。|w か|e た|r こ|t さ|y ら|u ち|i く|o つ|p ，|@ 、|[   | Enter|
   +-------+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+    |
C段|  Caps   |A を|S あ|D な|F ゅ|G も|H み|J お|K の|L ょ|+ っ|*   |} 」|    |
   |  英数   |a う|s し|d て|f け|g せ|h は|j と|k き|l い|; ん|:   |]   |    |
   +---------+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+----+
B段|  Shift     |Z ぅ|X ー|C ろ|V や|B ぃ|N ぬ|M ゆ|< む|> わ|? ぉ|    | Shift|
   |            |z ．|x ひ|c す|v ふ|b へ|n め|m そ|, ね|. ほ|/ ・|_   |      |
   +--------+---++---+-+--+----+----+----+-+--+----+----++---+-+--+-+--+-+--+-+
A段|  Ctrl  |Win | Alt |親指左 |  空  白   |親指右 | ひら| Alt |Win |appl|Ctrl|
   |        |    |     |無変換 |  　 　    |変換   | がな|     |    |    |    |
   +--------------------------------------------------------------------------+

各キーに割り当てられた四つの文字記号の見方

+--------+--------+
|英数Mode|かなMode|
|Shift側 |単色同時|
|打鍵    |打鍵    |
+--------+--------+
|英数Mode|かなMode|
|非Shift |単独打鍵|
|側打鍵  |        |
+--------+--------+

かなMode単独打鍵：親指シフトキーを押下せずに、文字キーの単独打鍵操作で入力する文字。
かなMode単色同時打鍵：同じ手の親指と他の指との「同時打鍵」によって入力する文字。
上の図では、最上段(E段)において和英両モードで同じ文字が入力できることを明記した。すなわち、「英数Mode非Shift側打鍵＝かなMode単独打鍵」、「英数Mode Shift側打鍵＝かなMode単色同時打鍵」というように、最上段では両モードで同じ文字記号が入力できるのである。
上の図では、作図の都合上、反対側の手の親指との「同時打鍵」操作(＝「二色同時打鍵」と呼ばれる)を表示していない。そこで、次の図で「二色同時打鍵」によって入力するかな文字配列を示す。

二色同時打鍵(＝他方の手の親指との同時打鍵)の文字配列

[左手指]＋[右親指]で入力←  →[右手指]＋[左親指]で入力
 +----+----+----+----+----+ +----+----+----+----+----+----+----+----+
 |    |    |    |    |    | |    |    |    |    |    |    |    |    |
 |    |    |    |    |    | |    |    |    |    |    |    |    |    |
 +--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+-++-+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+
    |    |  が|  だ|  ご|  ざ| |  ぱ|  ぢ|  ぐ|  づ|  ぴ|    |    |
    |    |    |    |    |    | |    |    |    |    |    |    |    |
    +-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+
      |う゛|  じ|  で|  げ|  ぜ| |  ば|  ど|  ぎ|  ぽ|    |    |    |
      |    |    |    |    |    | |    |    |    |    |    |    |    |
      +--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+-++-+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+
         |    |  び|  ず|  ぶ|  べ| |  ぷ|  ぞ|  ぺ|  ぼ|    |    |
         |    |    |    |    |    | |    |    |    |    |    |    |
         +----+----+----+----+----+ +----+----+----+----+----+----+

NICOLA 109-T* 型の特徴

NICOLA 109-T* 型は、英数配列に関しては JIS X 6002 に準拠している。

特徴としては、OADG 日本語106／109キーボードの[半角／全角]キーを廃し、代わりにその位置に[漢字]キーを置いていることがある。また、最上段(E段)については、

英字入力モードの非シフト側入力とかな入力モードの単独文字キー入力とで同じ文字・記号を入力できる
英字入力モードのシフト側入力とかな入力モードの単色同時打鍵入力とで同じ文字・記号を入力できる

仕様になっている。簡単にいえば、最上段については、和英両モードで同じ文字・記号が入力できるということだ。

このNICOLA 109-T* 型を OADG 日本語106／109キーボードで実現するためには、次の二つのステップを踏む必要がある。必ず、1→2の順で作業を進めること。

STEP 1.: VxDによるキー配列変更ツールを使って、OADG 日本語106／109キーボードの[半角／全角]キーを[漢字]キーへと入れ替える(スキャンコードの入れ替えを行う)。これはすなわち、日本語IME OFF の状態でのキー配列を入れ替えるということである。
STEP 2.: 「親指ひゅんＱ」や「Q's Nicolatter」の付属機能を活用して、日本語IME ON 時に配列変換される文字キー／制御キーの配置を一部入れ替える。

以下では、まず1についてフリーソフトウェアの SwapScan.386 と Keymap.vxd を使ってこのスキャンコードを入れ替える方法を紹介し、次に2について「親指ひゅんＱ」と「Q's Nicolatter」で「NICOLA 109-T* 型」のキー配列を実現するためのキー配列定義ファイルを紹介しよう。

STEP 1: VxD によるスキャンコード入れ替えの実際

NICOLA 109-T* 型のキーレイアウトを、OADG 日本語キーボードで実現するためには、[半角/全角]キーを[漢字]キーと置き換える必要がある。これはキーボードのスキャンコード入れ替えによって行う。そのスキャンコード入れ替えは、SwapScan.386 もくしは Keymap.vxd というフリーソフトウェアを使用して実行することが出来る。

SwapScan.386 の入手先: http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se026773.html
バージョン： SwapScan.386 1.0.0
ファイル名： swscn100.lzh 3K 1995.7.25
Keymap.vxd の入手先: NIFTY SERVE の「ファイル検索」サービス(コマンドは GO FILEFIND )で、作者(河童氏)のNIFTY SERVE ID「JAE00772」を検索キーにして探すことができる。
ソフトウェア名： 「VxDによるWindows 95キーボード改造計画」
※このページの筆者が使用したのは、登録名 KM95V11.LZH のソフトである。

(1-1) SwapScan.386 を使用した場合：

※ SwapScan.386 の使用法全般については、付属のドキュメントを参照のこと。
※また、 system.ini の編集方法については、別文書を参照のこと。

system.ini [386Enh]セクションに、以下のエントリーを追加。 <ここから>----- device=SwapScan.386 <ここまで>----- system.ini に以下のセクション及びエントリーを追加。 <ここから>----- [SwapScan.386] SwapLCtrlCaps=no; [LCtrl]<-->[Caps]必ず"no"を指定すること。 SwapHanzenEsc=no; [Hanzen]<-->[Esc]必ず"no"を指定すること。 IMEHot=29; [Hanzen]-->IME on/off key <ここまで>-----

(1-2) keymap.vxd を使用した場合：

※ keymap.vxd の使用法全般については、付属のドキュメントを参照のこと。
※また、 system.ini の編集方法については、別文書を参照のこと。

system.ini [386Enh]セクションに、以下のエントリーを追加。 <ここから>----- device=C:\KEYMAP95\KEYMAP.VXD ;（パスは各自変更してください） <ここまで>----- system.ini に以下のセクション及びエントリーを追加。 <ここから>----- [KEYMAP.VXD] Enable=1 ;enable changing keys Key=0029H,8000H ;r-alt,alt-` ([半角/全角]キーを[漢字]キーとする。) <ここまで>-----

STEP 2: 親指ひゅんＱ、Q's Nicolatterによる文字配列変換のカスタマイズ

STEP 1の作業が正しく行われ、マシンを再起動させたのちに、初めて STEP 2 に入ることが出来る。「親指ひゅんＱ」と「Q's Nicolatter」には、それぞれ「OYAQL.EXE」、「KMEDIT.EXE」というキー配列変更用のユーティリティが附属している。これらのユーティリティを使いこなす自信のある人なら、STEP 1 の終了後、上の配列図に則って、「親指ひゅんＱ」や「Q's Nicolatter」使用時(すなわち、日本語IME ON時)の配列変更を行えばよい。

とはいえ、パソコンにあまり詳しくない初心者～中級者の場合、上記ユーティリティを使って自力でキー定義ファイルを作成することは、予想以上に頭が混乱する作業となる。そこで筆者は、このキー・レイアウト(NICOLA 109-T*型)で「親指ひゅんＱ」や「Q's Nicolatter」を使うためのキー定義ファイルを用意した。 (親指ひゅんＱ作者の日笠健氏、Q's Nicolatter作者の堀川久氏の許可を得て公開している。)

親指ひゅんＱ用--> NIC_109T.OLY　(2,411 bytes)
※注意：上のリンクをマウスで「右クリック」して、メニューから「対象をファイルに保存」(Internet Explorer 5 の場合)、「ディスクに保存」(Internet Explorer 4.x の場合)、「リンクを名前を付けて保存」(Netscape Communicatorの場合)を選択して下さい。
Q's Nicolatter用--> NIC_109T.KMD (バイナリーファイル。6,291 bytes. )
※注意：上のリンクをマウスで「右クリック」して、メニューから「対象をファイルに保存」(Internet Explorer 5 の場合)、「ディスクに保存」(Internet Explorer 4.x の場合)、「リンクを名前を付けて保存」(Netscape Communicatorの場合)を選択して下さい。

これらのキー定義ファイルを、STEP 1に示したスキャンコード入れ替えと併用することによって、キーカスタマイズは実現する。STEP 1の作業なしにこれらのキー定義ファイルを使っても、所期の効果は得られないので注意。

キー定義ファイルの指定方法：

親指ひゅんＱの場合：
1. ダウンロードしたキー定義ファイル NIC_109T.OLY を、親指ひゅんＱをインストールしたフォルダにコピーする。
2. 親指ひゅんＱを起動させ、タスクトレイ(＝パソコン画面右下にある小さなアイコンが整列しているコーナー)の黄色い[Q]のアイコンを「右クリック」して、飛び出てきたメニューから[プロパティ]をクリックし、親指ひゅんＱのプロパティ設定画面を開く。
3. [プロパティ]／[動作]タブの設定内容：「NICOLA配列にする」、「起動時に設定を読む」、「起動時にNICOLA」の3つのチェックボックスをチェックする。
4. [プロパティ]／[キーボード］タブの設定内容：「使用するキーボードの選択」で、「日本語キーボード(J)」のボタンをクリックして押し下げる。また、「起動時に配列を読む」のチェックボックスをチェックし、キー配列指定テキストボックスで NIC_109T.OLY の「フル・パス」(＝あり場所＆ファイル名)を指定する。この指定を行うには、右横にある[...]という小さなボタンをクリックして「配列データファイルを選ぶ」というダイアログボックスで NIC_109T.OLY を「開く」。
5. [プロパティ]のその他のタブ、すなわち、[IME], [親指キー]については、親指ひゅんＱのヘルプを参照して、各自の環境に合わせて設定を行う。
Q's Nicolatter の場合：
1. ダウンロードしたキー定義ファイルNIC_109T.KMD を、Q's Nicolatter をインストールしたフォルダにコピーする。
2. Q's Nicolatterを起動させ、タスクトレイ(＝パソコン画面右下にある小さなアイコンが整列しているコーナー)のQ's Nicolatterのアイコンを「右クリック」して、飛び出てきたメニューから[プロパティ]をクリックし、Q's Nicolatterのプロパティ設定画面を開く。
3. [プロパティ]／[日本語入力]／[キー配列]でNIC_109T.KMD を「選択」する。

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